☆☆☆ merry 04


  第4話 秘密裏会議

 空は美しい夕日に移り変わり、辺りは光と影、暗闇の領域が広がり始めていた。
 冷たい石畳の会議室。
 赤い夕日を背後に浴びながら、アレンは重々しく溜め息をついた。
「はあ・・・どうしたものか」
 彼の表情は影になって見えない。
 心底疲れたような声音が、この窮状を物語っていた。
「あの、王子・・・」
 新米騎士のセシルが小さく声をかけた。
「僕一人では、とても身が持ちません。今朝のやりとりだけで、どれほど消耗したか・・・あの場にいた王子ならわかっていただけるかと・・・!!」
 徐々に声に熱が入る。
 勢い込んで彼はアレンに詰め寄った。
「・・・ああ、わかっている」
 アレンの返答に少し冷静さを取り戻すセシル。
「よかった・・・。では、当番制にしましょう! 他にも誰か、巻き込んで・・・いえ、適任がいます! 同期の騎士なんですが、心身共にタフで臨機応変な優秀な者たちです・・・!!」
 セシルは必死だった。
 アレンにはその気持ちは痛いほどわかっていた。
 彼が必死になって訴える度、アレンの良心はじくじくと痛み、セシルばかりを犠牲にするわけにはいかないと思った。
「・・・そうか。どういう者たちだ?」
「はい!
 まずは、サン・フロート。心身に隙がなく、慎重な性格で、メリー嬢の起こすトラブルを上手く誤魔化し・・・いえ、処理してくれると思います!!
 次に、フリエル・クローゼン。騎士を志す数少ない年若い女性で、女性同士のやり取りで、メリー嬢をリラックスさせることが出来るかと思います!!
 最後に、ローダ・コリークス。屈強な体躯と、鋭い勘を活かして、メリー嬢のトラブルを事前に察知し、食い止めることが出来ると思います! 万が一何かあっても、サバイバル能力が高いので、幅広い状況に対応可能です!
 全員、腕に覚えがあり、多少のトラブルには上手く対応可能だと思います!
 メリー嬢と年が近いので、きっと話も合うし、上手く友好関係を築けると思われますッ!!!!」
 セシルは精一杯伝えた。
 アレンはセシルの熱意に打たれた。
「わかった。とりあえず、その三人とお前でローテーションを組み、どうにかしばらく回してみてくれ。
 うまく専門家を招くことが出来れば、この大変な任務から、すぐに外してやるから・・・!」
 アレンの言葉に希望が広がったとセシルは涙ぐんだ。
「お、王子・・・! あ、ありがとうございます・・・!!」
 なんとか頑張ってみます、それまで死にません! 生き延びてみせます!!とセシルは感涙の中、アレンと手を取り合った。
 熱い夕日の中、ついいつものノリで青春真っ盛りなテンションの寸劇を行ってしまった仲の良い二人だった。
「では、明日からさっそく、サン、フリエル、ローダの順に当番制にさせていただきます!!」
「ああ。三人にはお前から話を頼む」
「もちろんです!! 何が起こっても説得はしくじりませんから!!!!」
 燃えるセシルの瞳。
 眩し過ぎてアレンは直視できなかった。
 そう、見てはいけない・・・。見ては。巻き込まれるのは火を見るより明らかだからだ・・・。
「まあ、頑張ってくれ。ではな!」
「はい! 失礼致します!!」
 セシルはかつてないほど、びしっと礼をして会議室を後にした。



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